California Sunset - 香りの記憶

ふっとその情景が頭に浮かぶ、香りがある。
体のセンサーが一瞬にして反応し、遠い記憶を呼び起こすような。
古本のインク、旅先で立ち寄ったカフェの店内、故郷の雨の匂い。
体の中の細胞が記憶していたものが湧き出て、昔どこかでふれた感触が心に残る。
香りは、つかの間に私を遠くに連れて行く。

カリフォルニア州の砂漠地帯にあるジョシュアツリーの旅の途中で、私は香りを取り扱うお店に立ち寄った。
そこでは、その土地で作られた手作りのキャンドル、お香、液体瓶など、聞いたことのない成分や、センスの良いクラフトのパッケージが、棚、テーブルに並び、いろんな香りが入り混じり店内の隅々まで満たしている。
私はPalo Santo(パロサント)と呼ばれる天然の香木に出会った。
見た目は手のひらに収まるほどの枝木で、火をつけると、スモーキーで、とても心地いい香りがする。
自宅に帰り、部屋にその香りを巻きながら、
私はあの日にジョシュアツリーで見た、岩肌がオレンジに染まりゆく夕暮れの情景をふと思い出す。

